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SOSEI TALK

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有機農業に生きる

第6回の「SOSEI TALK」は、長澤農園(京都・太秦)を経営、有機農業家でありながら2007年度より同志社大学総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション研究コースに入学をされた長澤源一さんを中心に、有機農業の現場や食と農の問題を視点とした大学院での研究について座談会形式で語り合った。同研究科教授の今里滋をコーディネーターとし、本多幸子さん、渡辺雄人さんが参加。
(長澤源一さんご自宅にて:2007年8月2日)

今里 今日の座談会のテーマは「有機農業に生きる」ということで設定をしていますが、有機農業に限らず、総合政策科学研究科の院生として長澤さんの感想や、他の皆さんのコメントなど、様々な話題に焦点をあてて展開できればと思います。
さて、長澤さんは昭和28年(1953年)生まれ、京都で初めての有機農業認証農家でありながら50歳を過ぎてから同志社大学大学院の門をたたかれた“奇特な方”、ということになりますが、まずは長澤さんの自己紹介代わりとして、有機農業を始めるに至ったいきさつについて、簡単に振り返っていただけますでしょうか。
長澤 はい、わかりました。
私共の家は代々農業を営んでおりまして、私で17代目になります。判っているだけで400年位前からこの地に家があって、住んでいることになりますね。以来ずっと農業を家業として営んでまいりました。
私は大学卒業後すぐに農業についたのですが、その10年後、そう、今から20年くらい前でしょうか、私自身がナスにかける農薬散布中に2年続けて体調不良を起こしました。その時から私にとっては農薬が非常に「危険なもの」となったわけです。その後、栽培品目を変え、ナスを止めて夏場の主力作物を九条葱にしたのですが、それでもやはり同じように大量の農薬散布をせざるを得ず、何も解決はしませんでした。その頃から有機栽培に農法を転換したことになります。
有機農業とは、農薬を使わずに作物を栽培することなのですが、江戸時代は全て有機農業でしたよね、しかも資源循環型の。あの頃は国民の約9割が農業を営んでおり、それが全て有機栽培だったわけですから、始めた当初は「簡単にできるだろう」と安易に考えていました。しかし結果は散々たるもの。有機農業を始めた5年間は、仕事はしているけれども収入はない状態、俗に言いますと道楽状態でして(笑)、生活そのものがまったく成り立たない状況が続きました。
有機栽培に変更してからそれなりの生産物が収穫できるようになるまで、約10年かかっています。周りには有機農業を教えていただける方も、実際に有機栽培をされている方もいらっしゃいませんでしたので、自分自身で試しては失敗し、また失敗しては覚えと、ずっと手探りでやってきたという感じです。
2000年くらいからでしょうか、大手スーパーとか料理店とか、それなりに名の通った取引先に出荷ができるようになりまして、やっと自信が出ました。最近では取引のお話があっても十分お応えすることができず、順番を待っていただくか、残念ながらお断りをするという状況です。おかげ様で、現在はなんとかそれなりにかたちが出来上がりつつある、というところでしょうか。
今里 ありがとうございます。
簡単にご自身の有機農業家としての歴史を振り返っていただきましたが、以前お伺いしたところによると、ナスの農薬散布で体調を崩された時、主治医の先生に「こんなに害毒のある仕事はもうやめろ。おまえの体に責任が持てないので、来るな!」と言われたことがあるとおっしゃっていましたよね。農薬の害毒を、身をもって体験されたということになるのでしょうね。
また、当初はご自身で有機野菜を移動販売されていたのですが、なかなか消費者の方が買ってくれなかったということもお伺いしています。特に虫が食ったりしているような、見てくれが悪い点が敬遠されたと。逆に消費者の方は見てくれのよいものを好んでいたということになりますが、そうした消費者の嗜好に変化が見られたということでしょうか。
長澤 以前に比べて、有機作物に興味のある方は多少増えつつあるように思いますが、基本的に一般消費者の嗜好は、従来と変わらないような気がしています。変わりつつあるのは業界の方ですね。販売する側、料理店、そちらの反応の方が鋭くなってきています。我々農家の人間は、消費者の方とお話する機会は少ないのですが、直接消費者と接する業界の方が、有機作物の必要性を敏感に感じ取っているのでしょう。ですから、有機作物を使いたいとか、販売したいという需要が高まっているのかと思っていますが。
今里 長澤さんのつくられる有機作物は、単に農薬を使わないとか、人工的な化学肥料を使わないということではなくて、非常に味にこだわられているんですよね?
長澤 そうですね。
今里 やはりおいしくなければ野菜じゃない、ということでしょうか。(笑)
長澤 いえ、単純にそういうことではないのですが(笑)。基本的に有機栽培したものは全ておいしくないんです。私が最初に作ったものもまずかったですから。
今栽培している野菜は、格段に味のレベルが上がっております。同じ有機栽培をしていましても、栽培の方法によって味がガラっと変わるんですね。食べ物である以上、まずいよりもおいしい方がいいでしょう。薬でしたら苦くても我慢して飲むんでしょうけれども、食材ですから、やはりおいしい方がよいであろうと。
そういう理由で、とことんおいしさ、うまさにこだわってやっています。
今里 滋
今里 滋
同志社大学大学院総合政策科学研究科
ソーシャル・イノベーション研究コース、
公共政策コース 教授
長澤 源一
長澤 源一
同志社大学大学院総合政策科学研究科
ソーシャル・イノベーション研究コース 前期課程1年次生京都・太秦 長澤農園 経営
本多 幸子
本多 幸子
同志社大学大学院総合政策科学研究科
公共政策コース 後期課程2年次生
渡辺 雄人
渡辺 雄人
同志社大学大学院総合政策科学研究科
公共政策コース 前期課程修了生;研修生

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