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SOSEI TALK

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日本における「技術イノベーション」と大学教育環境

第4回の「SOUSEI TALK」は技術・革新的経営(TIM)研究コースの創設者で文部科学省21世紀COE(世界的研究拠点)プログラムの代表である中田喜文教授と英国ケンブリッジ大学で長年教育研究に携わってきたヒュー・ウィッタカー教授が対談し、COEプログラムの認可が与えた学内外への影響と、現在そして今後の大学教育環境について語り合った。
(2006年6月15日)

中田教授 2003年にCOE研究助成に応募してその年の夏に選抜されました。ビジネスに関連する研究拠点としては、東京大学、一橋大学、神戸大学と共に日本に四つしかない研究拠点のひとつであるというのが我々のCOEの位置付けです。これら4つは、神戸大学を除くとなんらかの意味で技術やものづくりのイノベーションが入っていることが特徴なのですが、文部科学省も21世紀の日本の社会科学、とりわけビジネス研究において技術イノベーションというのが重要だと認識していると思います。そういう意味で我々はその3つの中でどういう位置を占めているのか。そして他の大学と我々との違いや相対的な関係はどうか。私自身は当初、技術・イノベーションと社会との関係が大切だということと、人と組織を大事にする。この二つが特徴だと思っていて、これからも重要なポイントだと思っています。そういう視点から、この3年間を振り返ってみると、当初、こうあってほしい、と思っていたものと実態とはどう違っていて、これからはどうしたいと思いますか?
ウィッタカー教授 COEを申請した時には、すでにオムロンの寄付金を使って研究所を作り始めていました。そこでの構想は、京都を代表する企業の経営者やエンジニアと話をして、関西の企業はどういうニーズや課題に直面しているか。その認識の上で研究プログラムや教育プログラムを考えようと思っていました。それを自然にCOEの申請に持ち込んだつもりです。したがって我々の環境や研究関心は確かに他の三つの研究機関とオーバーラップしながら独自性があると思うのです。私は同志社大学に来る前はイギリスにいて、1980年代から約20年間にわたり、イギリスの大きな産業構造の変化や、それが生み出した社会へのインパクトを見てきました。日本もある意味では似た過渡期であると認識しました。そこでイギリスやアメリカでの経験を踏まえ、日本独自の、関西企業独自の対応があるのではないかと、それは何なのかということを研究すべきではないかと思います。これは私の認識であり、おそらくは私たち共通の認識だとも思います。技術の進歩があり、組織や雇用関係は重要との考えが日本にはありますが、そこにフォーカスしていろいろな研究成果を出版物あるいは教育のなかに完結すべきだと思うのです。
中田教授 中田教授の写真日本独自の対応があるのでは?と考えた時に、たとえばイギリスの実態に対しても他の対応や対策があったのでは?という考えがあると思うのですが、いかがですか?
ウィッタカー教授 イギリスではサッチャー政策の下で大きな不況があり、3年間で4分の1の製造業の仕事が消えました。その時、特に北部ではかなり苦い薬を飲まされたのです。日本でも1990年代に大企業がいろいろな問題に直面した時、イギリスの大企業のようにすぐに解雇のリストラをやらずに、どうやって競争力を立て直すか、イノベーションを立て直すかを考え、健全なイノベーションシステムを大企業の中で立て直しながら、改善をしやすい環境を作るべきだと。かつての日本の、改善率が高く、かつ大企業のイノベーションを確立して行った戦後のダイナミズムのように、もう一回違った環境の中で作り直せるのではないかと思いました。それが望ましいと思い、いろいろな研究プロジェクトをつくろうとしたのです。
中田教授 日本の現状で、研究成果を評価するならばどの程度までそれが実現されていると思いますか?
ウィッタカー教授 ウィッタカー教授の写真MOT(技術経営)が2001年くらいから政策課題として大きくなりました。経済産業省が教育重視のMOT政策でエンジニアがビジネスのマインドを持ちながら技術の推進と技術開発をするという運動を展開した時に、それは正解だなと思いました。日本の企業の競争力を考え直して立て直すきっかけにはなるだろうと感じていたのです。それがどの程度実現できたかいうと、企業によってまだ先があると思いますが、一定の成果はあがったと思っています。
中田教授 先日我々はある企業の方と社内MOTの話しをしたのですが、その企業はとても注目されていてV字改革したといわれているけれども、彼らがそのときまでやって来たことを聞いて、あまり変わっていないなという印象を持ちました。次から次へシームレスに良いイノベーションが生まれてくるかというと、残念ながらなっていないのではないか、という印象を持ったのです。だからいい企業もあれば悪い企業もある。でも、さらに業績がよくなってもまだ変わっていない。そういうことで若干私はまだ、ペシミスト(悲観主義者)かもしれません(笑)。
ウィッタカー教授 確かに改革をやっても人々の考えや行動、価値観、企業文化が大きな変化を見せないですね。痛みも少ないけど変化も少ないという、そういう潜在的な危険性、がある。そのひとつの例は、これだけ世界中あちこちで技術が開発され、これだけ激しいペースの国際競争の中で、閉鎖的に考え、さらにスピード感が薄い、鈍いという危険性もあると思います。
中田喜文
同志社大学大学院総合政策科技術・革新的経営(TIM)研究コース教授
ヒュー・ウィッタカー
同志社大学大学院総合政策科技術・革新的経営(TIM)研究コース教授

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