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SDGsとジェンダー

投稿者 岡本 由美子:2022年12月1日

投稿者 岡本 由美子:2022年12月1日

 2015年9月の国連サミットで、加盟国の全会一致で「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。その中に、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標、つまり、持続可能な開発目標(SDGs)が記載されたことはすでに皆さん、御存知の通りです。SDGsは17の目標からなりますが、その一つが、ジェンダー平等の実現(目標5)です。1979年の国連総会で女性差別撤廃条約が採択されてから40年以上が経過しましたが、ジェンダー平等達成までの道のりはまだまだ長いと言わざるを得ません。したがって、2015年、国連の総会で、2030年までに達成すべき国際目標の一つとして、ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワメントを図ることに合意したことの意味は重いと言えましょう。
 ただ、本日、皆さんに知っていただきたいのは、実は、ジェンダー平等及びジェンダーの視点を確保し施策に反映していくこと(今日、これは“ジェンダー主流化”と呼ばれていますが)は、SDGsの目標5のみならず、あらゆるSDGsの達成に必要である、ということです。例をあげてみましょう。例えば、SDGsの目標1である貧困の撲滅のためには、ジェンダーの視点が欠かせないのです。私は現在、ウガンダの東部地域の有機コーヒー小規模農家を対象に研究を行っていますが、女性は品質の高い有機コーヒーをつくるのに長けているものの、女性よりは男性がコーヒー組合に参加する傾向が少なくともこれまではあったため、女性はビジネスに参加する機会が与えられませんでした。その結果、女性の家庭内の地位も低いままでした。さらに、このような男女不平等の影響は子どもにも伝播する傾向にあります。このような状況下では、コーヒー農家の貧困、とりわけ、女性や女児の貧困は永遠に解消されることはないといえましょう。開発政策においてジェンダー視点が欠かせないのはこのためであります。
 また、現在、地球温暖化とそれによって生じている気候変動の規模の拡大への対処は全世界の喫緊の課題であることは言うまでもありません。規模が拡大化する気候変動によって生じている自然災害は途上国のみならず先進国をも巻き込み、毎年、非常に多くの方々が影響を受けています。ただし、気候変動・災害対策においてもジェンダー視点が欠かせないのです。近年生じた大規模自然災害では女性の方が男性よりも大きな被害を受けやすいことが報告されています 。12022年7月終わりにおいてウガンダ東部に大規模な洪水が発生し、私が研究対象としている地域も大きな被害を受けたのですが、女性コーヒー農家さんへのインタビュー 2を通して、男性よりも女性や子供の方が自然災害の犠牲になる傾向がより強いことが確認されました。このため、国連ウィメン日本協会の田中由美子理事は、ジェンダーの視点から気候変動・災害対策をすることの重要性について訴えています 。3
 ジェンダー平等及びジェンダー視点を確保して様々な社会的問題・課題に取り組む“ジェンダー主流化”の流れは今後、益々、重要になっていくと思われます。このような流れを受けて、同志社大学大学院総合政策科学研究科は新しい大学院プログラム「サステイナビリティー共創プログラム-SDGsとジェンダー-」を2023年度から開講します。同志社大学政策学部でも同大学院と十分に連携をとりながら、“ジェンダー主流化”を政策理念として導入していきたいと考えております。


1.OECD(2021), Gender and the Environment: Building Evidence and Policies to Achieve the SDGs, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/3d32ca39-en
2.2022年9月7日、Zoomミーティングルームで4人の女性コーヒー農家さんにインタビューを行った。
3.フロントロウ編集部(2022)「『ジェンダーの視点』から『気候変動』を考える、国連ウィメン日本協会田中由美子理事にインタビュー」FRONTROW(2022年3月6日にインタビュー)。https://front-row.jp/_ct/17516234 (最終アクセス日:2022年3月31日)。