- 総合政策科学研究科ホーム
- SOSEI TALK
- SOSEI TALK #15 page2
- 福岡
- 私は消防組織の救急救命士について、特に救急救命士の生涯教育や雇用の問題について、タイトルはまだはっきりと決めていないんですけれども、まとめていきたいと思っています。と言いますのは、救急車の出動件数が、現在は全国で年間約600万件以上に達しているんですね。今後も、さらに増加することが予想されています。けれども、これ以上、救急隊の数も増えていかないし、自治体は財政的にとても厳しいものがあるため、充分な予算編成が困難な状況となっています。しかし、救急車に乗車し出動していく救急救命士たちは、さらなる救命率向上のため、今の救急サービスの質を落とすわけにはいきません。また、出動が増えることで、救急救命士は様々なストレスを抱えます。その要因もいろいろなものが関係していると思います。より質の高い救急医療を提供するためには、救急救命士がいろんな意味で成長していかないといけません。もともと日本の救急救命士というのは海外のパラメディックをモデルに誕生し、約25年が経ちました。しかし、海外と日本では救急救命士を取り巻く環境、雇用のあり方、組織風土などは違いますので、日本の救急救命士が、今後どのように、何を目指して成長していくのか分析していかなければならないと思っています。
- 久保
- 福岡さんがゼミに来るまで、救急救命の現場がどうなっているのかをまったく知りませんでしたし、救急救命士の方々が日々そういったジレンマに直面されていることも初めて知りました。逆に、他のメンバーから介護や医療などの話を聞き、それを自分の分野に当てはめてみると、似たようなところがあるけれども違ったところもあるし、その辺が、議論していて、けっこう面白い部分になるのかなと思いますね。
- 福岡
- 本当にそうですね。歴史の長い看護の世界では先行研究が多く発表されていますし、介護もいろんな研究をされていますけれども、消防では、まだそういった分野での研究が少ないので参考にできるものが多くあります。また、消防独特の組織風土の問題点もあると思いますので、他のヒューマンサービス組織や他の産業界と比較できればと思っています。
- 久保
- 何か後輩に掛ける言葉とかあったら、ぜひ。
- 稲垣
- 私は社会人というか、大学を卒業してから働きながら大学院で学ぶというのは、とても有効だなとは感じています。それはなぜかというと、実務をしているからわかることと、本とか机上の空論だけではなくて、実際に仕事をやってみて、起こっている問題とか課題を研究するというのであれば、そこが社会人院生の強みだと思うので、それが一番お勧めポイントだと思っています。学生で、大学院に行きたいけど、今は行けない。でも、それで諦めてしまうのではなくて、働きながらでも学ぼうと思ったら、いくらでも学べる。いつも学生たちに「チャレンジする学生を求めている企業は多いですよ」という話をしているんですけど、それは私たちが背中を見せないとじゃないけど、実際に働いている社会人がその姿を見せて、ああいう社会人になりたいなと思ってもらえるというのは、教育現場で特に必要なのではないかなとは感じています。社会人と大学院と両立するのは、時間的にはすごく大変だけれども、個人的にも組織的にも、すごく有意義なことではないかなと思います。
- 福岡
- 総合政策って、時間割的にも社会人でも通学できるようなカリキュラムで組んでくださっているので、とても良いと思います。ゼミはもちろんですけど、総合政策の同期や先輩とか、ほかの授業でも一緒になることで、いろんな意見交換ができるのは、生涯の財産だなと感じていますね。
- 稲垣
- 刺激も受けますよね。
- 福岡
- そうですね。
- 稲垣
- あ、こういう分野もあるんだというのを、いっぺんに知れる。
- 福岡
- そうそう。
- 稲垣
- 普通の大学院だと専門だけを学ぶんですけど、いろんな専門家が集まっていて、みんなが知恵を出し合えるし、議論していたら意見をもらえることも多い。その中で、こういうことも調べないとといけないとか、ここがわからない所だったんだというのが、とてもよくわかるようになってきました。
- 久保
- 私の大学の時の少し上の先輩なんですけど、今アメリカの大学で教鞭を執っている人が年に1回、総政に教えに来ているんですね。「ここは楽しい」と。社会人大学院をいろいろ見たけど、総合政策科学はいろんな人がいて、みんなかなりモチベーションが高いから授業していて、すごく楽しいという話を、前に一緒に飲みに行ったときにしていたことがあります。
- 稲垣
- だから、サボろうと思わないんですよね(笑)。
- 福岡
- ん、そうですね(笑)。
- 久保
- よっぽど仕事でトラブルになったとき以外はね。
- 稲垣
- はい。あと、体調が悪い時とか。それ以外は、もうほとんど全部出席で、すごくいい2年間を過ごさせていただいた。
- 福岡
- 本当に良い先輩で、しかも先輩だからと偉そうな感じでは全然なくて、気軽に、いつでも相談に乗ってくれます。
- 久保
- そうですね。
- 福岡
- 以前のゼミの先輩方とも何人かお会いしてますけど、みなさん本当に素晴らしい方ばかりで。
- 稲垣
- いつもゼミの帰り道とかにお世辞ではなくて、本当にこのゼミを選んでよかったねと、みんなが言いながら帰っていくし、もし論文が進まないことがあっても、修士だけじゃなくて博士の人も一緒に研究しているので、その人たちが自分たちの経験も踏まえて、「よくあることだよ。今、ここは、こういうふうに乗り越えるんだよ」というのも教えてくださったので、本当に働きながらでも心折れずに続けていけました。私は2年で修了すると自分で目標を決めてやっていたので、それが達成できるように、同期にも一人、留学生がいたんだけど、二人で励まし合いながら、先輩たちにも励ましてもらいながら、後輩たちにも応援してもらいながらやってこれました。私たちも後輩に同じようにしたいなと思っています。
- 久保
- 稲垣さんにはぜひ後輩を応援してもらわないとね。
- 稲垣
- そうですね。それが助け合えるというか、社会人だからアドバイスできることも。研究だけじゃなくて、例えば就活のことであったり、本当にプライベートなことであったとしても、社会人と学生では知っていることも違うから、そこでアドバイスがあったりするのは、すごくいい関係だなと思いながらしています。
- 福岡
- 正直、社会人をやりながらだとレポートに追われて大変なことがたくさんあるけれども。
- 稲垣
- そうね。あまり寝れてなかったり。
- 福岡
- だけど、その忙しいのが何とも言えない充実感がありますよね。
- 稲垣
- やり上げたときはね。
- 福岡
- 忙しいときのほうがむしろ。逆に何もないときだと、あれっという抜けた感じ。
- 稲垣
- そう。発表までの間のスケジュール管理とかは、ちゃんとしておかないと、慌ててできていませんでしたとなると、やっぱりつらいので。かといって大学院に来ているからといって日常の仕事をサボってしまうと、そちらにも迷惑が掛かる。私は、それは絶対嫌だなと思っていて、仕事もきちんとする、大学院でもちゃんと修了できるようにすることをこの2年間心がけてきたつもりなので。
- 福岡
- でも結果を出されましたからね。
- 稲垣
- いや、出していないです、まだ何も(笑)。
- 福岡
- いやいやいや。「総代」っていうんですか、素晴らしいですよね(笑)。
- 稲垣
- いえいえ、違う、違う(笑)。皆さんのおかげですから。
- 久保
- いよいよ「SOSEI TALK」にも総代が登場されましたという感じで今回はいきましょうか(笑)。
- 稲垣
- 違う、違う(笑)。それはいいです。
- 福岡
- 総代と1年間ゼミで一緒に研究させていただいて。
- 稲垣
- 思っていなかったでしょう(笑)?
- 福岡
- いやいやいや(笑)。
- 稲垣
- まさか!って、みんなが「えっ」と驚いたじゃないですか、先生が言ったら(笑)。
- 福岡
- ゼミ以外でも一緒の授業になったときに、とてもよく調べてこられているし、発言も積極的だし、どこに、この方、そんな時間があるんだろうと。もう間違いなく睡眠時間を削っているなというのはわかるのですけど。もう努力する姿はわかりましたよ、隣にいて。その結果ですよね、総代は。
- 久保
- その結果です、紛れもなく。
- 稲垣
- 本当に無事に修了できたのは、先生とゼミの皆さんのおかげです。あと、何のためにこの研究をしているのかをいつも考えなさいと、先生方が言ってくださっていたので、今ここで研究したことが現場でどういうふうに生かせるか、実際にその現場で役立てる人間になるということを一番の目標にしていました。社会人大学院生が求められていることは、ただ研究で終わるのではなくて、それを実際に現場でどう生かせるかというのが、一番大切ではないかなと思っていて。