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SOSEI TALK

ゼミの終わった後、お二人に残っていただいて総合政策科学研究科での学びについて話をしていただきました。担当者に「テーマは?」とたずねたところ「自由にお話ください」とのことでしたので、硬軟取り混ぜた話になっています。大学院で学ぶということは、(特に社会人にとっては)授業や論文執筆など、時間的、体力的に厳しい状況はありますが、3人の会話の中から、教員と学生、そして学生同士が相互に学びあう暖かい雰囲気の中で、学問的に、さらには職業人としても成長していける可能性を感じ取っていただければと思います。
稲垣 菊代 さん(総合政策科学専攻 政策研究コース 前期課程 修了生)
福岡 範恭 さん(総合政策科学専攻 政策研究コース 前期課程 2年生)
於:今出川校地新町キャンパス・渓水館(2017年5月17日)
出席者
久保 真人 教授稲垣 菊代 さん(総合政策科学専攻 政策研究コース 前期課程 修了生)
福岡 範恭 さん(総合政策科学専攻 政策研究コース 前期課程 2年生)
於:今出川校地新町キャンパス・渓水館(2017年5月17日)
Profile

同志社大学大学院
総合政策科学研究科
教授

同志社大学大学院
総合政策科学研究科
総合政策科学専攻
政策研究コース
修了生

同志社大学大学院
総合政策科学研究科
総合政策科学専攻
政策研究コース
2年生

- 久保
- では最初に稲垣さんから、なぜ総合政策科学研究科で学ぼうと思われたのか、その動機などをお話しいただけますか。
- 稲垣
- 現在私は、私立大学でキャリアカウンセラーという専門職に就いています。今は私たちの大学時代、もう20年以上前ですが(笑)、と違って、就職活動そのものがすごく複雑化していると同時に、景気が上向きの時でさえ、就職先が決まらない学生も多くいるのが現状です。自分の専門分野だけでは解決しづらかったりすることが多く、学生にアドバイスするときに経済や法学、社会状況などいろんな側面からカウンセリングできるようになれればと思って、総合的に学べる大学院ということで、総合政策科学研究科を受験しました。
- 久保
- なるほど。
- 福岡
- 伺ってもよろしいですか。
- 久保
- はい、もちろん。
- 福岡
- 久保先生を、どこでご存知になられたのでしょうか。
- 稲垣
- ほんとに偶然ですが、11月にあった入試説明会に参加したときに、久保先生が全体の説明をなさっていて、終わった後に質問しに行き、良い先生だなと思って(笑)。いろんな専門の先生がいらっしゃる中で、自分がやりたい研究に一番近いなと感じたのが、久保先生のゼミだったので、指導教官になっていただきたいとお願いしました。
- 福岡
- 大学のキャリアセンターの同僚の方とかで、大学院で政策の研究をされる方はいらっしゃいますか。
- 稲垣
- あまり大学院には行かないですよね。大学職員は、就職率とか、大学経営には興味があっても、なかなか政策としてというのはないし、私個人として、カウンセラーとして資質を上げにいくというよりも、キャリアセンターという組織で何か支援をしていくときに、今ある課題をどのようにすれば解決できるかというのを多角的な面から検証したいなと思っていたので。福岡さんは、どうですか。
- 福岡
- 私はもともと地方の消防職員で、今は救急救命士を養成する大学の教員をさせていただいております。救急救命士の心理について自分が研究している中で、先行研究の久保先生の論文を目にしました。自分が研究すべき具体的なものが何なのかを模索している時に、その論文を目にして、私が求めていたものは、こういうことだったのかもしれないと。その手掛かりになったのが先生の論文だったのです。現在は、京都市内に住んでおりますので、第一人者の先生が同志社大学におられるのなら、ぜひ一度ゼミの風景を見させていただきたいと思いました。
- 稲垣
- それで、オープンキャンパスで、ゼミを見に来られたんですね?
- 福岡
- そうですね。それで来させていただいたら、ゼミの方々の研究分野が、私にとっては、これからの研究に大いに参考になる研究ばかりで、しかもそれぞれの分野で、ご活躍されている方ばかりだったので、ぜひとも、この大学院で久保先生のゼミで研究したいと思って受験しました。
- 稲垣
- 入られて実際どうですか。
- 福岡
- 入る前は、総合政策という分野について最初はあまりよくわかっていなかったかもしれません。しかも、専門の救急救命学を医学系の大学院で深めたいという思いと、大学で学んだ心理学を、もう少し深く学びたいという思いがあって、ずっと迷っていたんです。ところが、ゼミを見学させていただいて、その後入学しましたが、完全にどちらの専門でもないのですけれども、いろんな視点で、さらに総合政策には様々な分野の先生方がおられて、自分が思っていた視点だけではなくて、もっと俯瞰的に、しかも専門的な研究できると確信しました。とても新鮮な学びも多くありますし、総合政策を選んだことは、私が研究を行っていく上で間違いなかったと思います。
- 久保
- 心理学というと、私も心理学出身ですけど、研究の中で、どうしても社会的な文脈が、かなり落ちてしまう。これをやって何になるのかなという研究が、かなり多いんですね。社会科学系の学部、あるいは大学院に所属していると、社会的文脈から、自分の研究を振り返ることができます。ゼミでは、医療、介護、救急、カウンセラーなど、ヒューマンサービス系がだいたい揃っているので、それぞれの立場から、いろいろと議論していただけていて、おそらく、すごく面白い内容になっているんじゃないかなと思うんですが。
- 稲垣
- 楽しいですよね。
- 福岡
- 楽しいですね。

- 稲垣
- 大学院だからもっと堅苦しくて、本当に文献だけ読んでまとめていくというイメージがすごくあったんですけど、どちらかというと、みんなの前で発表した後、ディスカッションをしながら自分の考え方をブラッシュアップしていく、まとめていくみたいな感じで。論文を書いていて途中で行き詰まったりしていても、ゼミに出てくると、いろんなアイデアを皆さんがくださって、それをやっているうちに、また書ける。で、またモチベーションも上がる。私はとても楽しかったですね。
- 久保
- 発表している時間よりも、その後のディスカッションの時間のほうが長いですよね、だいたい。
- 稲垣
- でも、それがうちらしいというか、うちの総合政策科学の在り方に近いのではないのかなと思っていて。
- 福岡
- 社会人だけじゃなくて、学部から上がってきている人もいるし、留学生もいるし、すごくバランスがいいんじゃないかなと思います。
- 久保
- そうですね。
- 稲垣
- まあ言ったら国も違うし、経歴とかもみんなが違うのが当たり前で、男女半々ぐらいで、年齢もバラバラで。若い人の意見とか、やっぱり年配は年配の人の意見があったりもしていいなと。
- 久保
- そういう意味では、ゼミでディスカッションしている中で、いろいろと気付くことって多いですよね。
- 福岡
- 多いですね。
- 稲垣
- 普段の実務の中では、同じことしかやっていない人と仕事をしていて、その人たちと問題について話し合っても、やっぱり同じ視点でしかできないけど、ここに来ると、例えば介護系だったらこんな風だよとか、看護系だったらこんな風だよと、同じヒューマンサービスの中でも違ったりすると、じゃあ、これを取り入れることはできないかなという気付きがたくさんある。また、学生で、すぐに大学院に来た人とかは一番身近というか、私が研究対象としている大学生の意見に近いような感じで、みんなどんな風に言っているかというのも教えてくれたりするので、現場でも役立ちました。
- 久保
- 稲垣さんは去年修了されて、今またゼミには来られていますけど、現場に戻られて何か変化はありましたか。
- 稲垣
- 大学職員って、どちらかというと、少し閉鎖的というか、今までの古いやり方を変えなくても、あまり苦労しないというか、やっている業務に関して大きな変革とかが求められることが少ない。その反面、社会状況は大きく変わってきているので、ゼミで話し合う内容を聞いていると、それを活用して学生にフィードバックしたりするには、ちょっと深みが出てきたのではないかなというのがあります。
- 久保
- 少しまた接するかたちが変わりましたか。
- 稲垣
- そうですね。あと、私的なことかもしれませんけど、大学を卒業してから久しぶりに大学院で修士論文を書くので、論文の書き方を一から学び直しました。現在、私が担当しているのは文学部の学生が主で、絶対卒業論文を書かなければいけない学部。学生は、卒業論文と就職活動を両立させないといけないので、論文の書き方の話ができたりするのは、就職活動とは直接関係ないけれども、学生とコミュニケーションを取る時に役立つというか。
- 久保
- 同じ立場を経験しているということですね。
- 稲垣
- はい。気持ちがよくわかるというか。論文を書くのは大変だというのもわかりながら支援するというのは、より学生に寄り添えるようになったんじゃないかなとは思っています。
- 久保
- このあたりで研究テーマについておうかがいしておきましょうか。稲垣さんは論文にまとめてられて、福岡さんは、これからまとめられるということですけど、稲垣さんはどういったことをまとめられて、福岡さんは、どういったところをまとめようとしているかということを、少しお話ししていただいてもいいですか。
- 稲垣
- 私の研究テーマは、個人のカウンセラーとしてではなくて、キャリアセンターにおいて学生支援に関する現状と課題を見つけ検討することでした。キャリアセンターが各大学でできて20年余り経ちましたが、そこから就職活動状況などどんどん変化しており、キャリアセンターの役割とか、やらなければいけないことも変化してきています。今、実際にどんな課題があって、それをどういうふうにキャリアセンターとして解決していける方法があるのかを論文にまとめました。課題もたくさんある中で、キャリアセンターで実施しているイベントを検証することによって、本当にそれが学生のためになっているのかどうか。それらを検証する方法が妥当かどうか深めていく研究をしました。