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SNSマーケティングにおける勝ちに不思議な勝ちあり?!

投稿者 多田 実:2023年5月1日

投稿者 多田 実:2023年5月1日


プロ野球監督の名将と呼ばれる野村克也(のむらかつや:1935~2020)のコメントで有名な「勝ちに不思議な勝ちあり 負けに不思議な負けなし」は、もともとは江戸時代の平戸藩主で、剣術の達人でもあった松浦静山(まつらせいざん:1760~1841)の言葉で、今でもしばしば様々な勝負の世界でよく語られる名言の1つです。

スポーツ以外の世界(たとえば恋愛や就活など)でもよく「勝ち組」という表現が使われますが、マーケティングにおいて、インターネット活用が大衆化した1990年代後半から2000年代の約10年間は、いかにしてGoogleやYahooの検索で上位に表示されるのかを考えるSEO(サーチエンジン最適化)に力を入れる企業が多く、まるで1つの「必勝法」のようでした。しかし、最近では、このような「ググる」や「ヤフる」を若者はしなくなりInstagramのハッシュタグから良さげなカフェなどを検索する(=「タグる」)ようになりました。その結果、インスタやツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワーク)がマーケティングの販促ツールとして以前より重要になったと言えます。さらには、ここ数年、YouTubeでも頻繁に目にするようになったショートムービー(短尺動画)ですが、その火付け役は、やはりTikTok(ティックトック)の存在が大きいでしょう。

TikTokの世界的な大ヒットの理由は色々考えられますが、消費者行動論的な観点からは「レコメンド(おすすめ)アルゴリズム」の精度の高さが寄与しているでしょう。使えば使うほど、自分好みのショート動画が厳選されていくような感じです。アルゴリズムとは、コンピュータプログラムとして記述されている算法手順のことで、その内容が非公開なのでどのような項目を重視して投稿すると良いか、確実な方法はわかりません。TikTokでは、しばしば突然バズる(再生数が数万回を超える)ことがあり、その理由が投稿者には思い当たることがなく「不思議な勝ち」みたいになることがあるそうです。これを単なる偶然として済ませてしまうのではなく、とりわけSNSをマーケティングに活用するのであれば、レコメンドアルゴリズムの攻略が重要であることは間違いないので、実験のためのアカウントを作成し、バズらせる要因の仮説を立て、実験を繰り返して解明してみませんか。AI・データサイエンスの時代と叫ばれ、能動的に「ググる」、「タグる」のではなく、受動的にレコメンド(おすすめ)「される」ものに注目が向く今の世の中、SNSに限らず様々な場面において(たとえば自分自身の意思決定などでも)、アルゴリズム的に色々考えてみるのは、令和の時代に相応しいとてもクールなことだと言えるかもしれません。

ちなみに、筆者が政策学部で開講している「意思決定論」では、身近なアルゴリズムとして、カーナビや乗り換えアプリ、カラオケ採点などをこれまで紹介してきましたが、今年度から新たに、TikTokのレコメンドアルゴリズムを解明するための実験アカウントを作成・検証して得られた結果を授業でお話しする予定です。

→ TikTok実験アカウント「るのみだた」: https://www.tiktok.com/@luminortada