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SOSEI TALK

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SOSEI TALK #16

中田それは非常に面白い疑問だと思います。もう一度、南さんのご研究に戻って、お話ししたいのですが、今ご研究なさっているのは、文系の先生方に、いかに産官学連携のスキームに入ってきていただくか、どういうふうなスキームをつくれば、それがより活発化するか、その結果としてある種のイノベーションを起こすということを意識して研究されているわけでしょう。
はい、そうですね。
中田ですから、その意味では、何らかの研究の中で、そのアウトカムの測定というか、評価をしようとされているのですか。
そこが文系の先生との連携で難しいところです。理系の場合でしたら、共同研究につながるとか、特許が出るとか、一緒に外部資金でお金を取るとかという指標化がしやすいのですけれども、文系の先生の場合は、なかなか指標化が難しくて。
結局、理系の先生のように直接的な効果があるわけではなくて、間接的に企業の方に、こういう気づきがあるんだということに気づいた上で研究開発に臨んでいただくとか、そういうふうなところがあるので。いわゆる理系の場合はピンポイントな連携が多いですけど、文系の場合はversatileな、多様で何にでも融通の利くような価値を提供しているというところが特徴かなと思います。
中田ということは、なかなかアウトカムの測定はしにくいと。
しにくいです。
中田そういうふうな社会的な連携活動が、日本のイノベーション力を高めるという効果に結び付いているかどうかの仮説検証はできにくいということですか。
はい、数値化するというところではですね。
中田なるほどね。よくわかります。ただ、どうなんでしょうね。さっきのお話を伺っていると、例えば理系だったらパテントが幾つつくられたとか、登録されたとか。あるいは、そのパテントを使って、こんな商品がつくられて、売り上げが年間これぐらいありますよというのは、客観的な数値で見やすい。ただ、文系の先生方との交流で、ある種の気づきであったり、テーマ探査みたいな、よりファンデーションの部分ではあるけれど、こういうことが何かを生み出す、ということが言えれば、そこから、何か理系的な研究だとかも、その上に乗っかっていくと考えれば、やはり間接効果は明らかにありますよね。
はい、そうですね。
中田ならば、例えばそういう間接効果をどう評価するか。このおかげでこれだけのプロジェクトが生まれましたよとか、そういう言い方はたぶんできますね。
そうですね。
中田それから、先ほど来、テーマ探索のお話とか、包括協定のお話をされましたが、もう少し違ったかたちの文系の産学連携もあるんでしょう。
先ほどはテーマ探索の話ばかりしましたが、それ以外にも、文系の先生が企業に取締役であったり監査役に行かれている例が多々ございます。
私が調査したところによると、売上高上位200社のうち193名の大学の先生が企業の経営判断に関与されておりました。そのうち147名、76%が人文社会系出身で、技術連携とは異なる、例えば経営判断のところで文系の先生の知識はすごく役に立っているということです。 ほか、調査とかマーケティングも企業にとっては、すごく重要なスキームです。その一環で、大学の先生が企業と一緒に連携をして調査に関わったり、ロードマップの支援をしたりという事例もございます。あとはコンサルとか戦略立案の際に先生が関わるというケースもありますので、理系とはまったく異なるかたちでの連携というのが、文系の先生では執り行われているということです。
ただ、それを大学の産学連携の窓口も実態を把握していませんし、先生自体も、これが産学連携なのかということを意識され、公表されるわけでもないので、そういうところが文系のわかりにくいところだと思います。
中田実は、ちょうど先月、大学から、年度の初めに利益相反に関する確認書みたいなものが、全教員に回ってくるんです。同志社大学の場合は。その中で特定企業等に関しては年100万円以上の収入を得ている場合、トータルでは500万円の場合は、その書類に記載してくださいというアンケートがあるんです。例えば、そういう数字、あのときには100万円以上、500万円以上というだけであって、じゃあ幾らということは聞かれないものだから、集約の仕方は難しいと思いますけど、何らかのかたちで、そういうデータが、たぶん、ほぼすべての大学で、何らかの調査をやっていると思うんですよ。そのデータなんかが、もしうまく使えれば、(ある基準を超えた場合の話だけれども)どの程度の方々が、それを超えた基準でやっていますかということは、たぶん比較可能な数字として使えると思うし。
そうですね。
中田場合によったら大学に働き掛けて、もう少しそのハードルを下げて、1企業が50万円以上だとか、トータルで200万円とかにしてくれると、そこに書く人がもっと多くなってきて、より全体が把握されますね。
それはおっしゃるとおりです。ほんとに大学の事務局自体が、まだ実態を十分把握できていないというのが問題だと思います。実態として、産学連携を文系の先生はされていることもあるのに、そこを把握しないのは、ちょっともったいないと思います。それが、産学連携は理系がするものというイメージばかりが先行して定着している原因だと思います。
中田僕も、この話もあったので、丁寧に利益相反の文書を読んだんです。同志社の場合、スタンスを見るとエンカレッジしたいんだという意識があって。決してこれはパニッシュしたりするための話ではなくて、いかにそれを社会的にもちゃんとやっていますよということを言うためにも、フェアなルールに沿ってやっていることを確認したい。万が一、若干知識不足で本来のルールと少し問題がありそうな場合には、早い段階でそのことの気づきを与えて、適切な助言を与えることで、その産学連携がうまくいくことをサポートしたいんですよね。
そうですね。
中田もし、そういうことであれば、100とか500という制限なんかはかけずに、実態はどうなんですかと尋ねればいい。われわれとしても、できるだけたくさんやっているということを大学としては社会に公言したいから、たくさん数字を出してくださいと。
それはそうです。
中田あと、僕が一つ感じたのは研究費のことなんです。例えば、われわれが若いときから今までを振り返ったときに、研究費をどうして調達したかというと、もちろん大学の研究費もいただいていますけど、一番大きかったのは、やっぱり公的な文科省の科研等ですよね。そこはもう、先ほど来、議論している日本の科学技術力の源となる研究費という意味ではとても大事だし、それについては、日本はまだ比較的安定して、大きな削減もされていない。僕は、そこはとてもいいことだと思う。ただ、世界と比べたときに、日本全体で見たときの科学研究費予算の比率が、主要国と比べると日本は低い。
そうですね。
中田かつ、そのかなりが企業の研究。もうご存じだと思いますけど、トヨタだとか、日立だとか、ああいう日本の大企業が1年間に使っている研究費は、国立大学全体の研究費と比べても大きい。民間企業が持っている研究費を、もっと有効に使うという意味でも、大学の研究者なんかが一緒に研究したりする場がもっと増えれば、公的比率は低いけれども、私的な研究費がより公的な使われ方をすることで、日本全体の技術力のかさ上げにもつながるような気がします。
そういう意味では、まさに産官学連携を通した研究費の、あるいは大学研究者が民間研究費に対するアクセス性が、結果として高まることにとっていいんじゃないかと思うのですが、いかがですか。
おっしゃるとおりで、今、日本のGDP全体で言いますと、25%ぐらいしか製造業はないわけですね。6割近くがサービス業になってきて、いかに知識というところに付加価値を付けるかということが、すごく重要になってきているかと思います。
ただ、実態を見ますと、日本と海外とで似たような研究でも、海外にはかなり高額を企業が出されていて、日本の大学に対しては、同じような研究でも安い金額で、いまだに先生の知識をタダだと思っている企業も、中にはあるのが事実です。
中田あはははっ。
そういうふうなことも踏まえますと、大学も企業も一緒に、知識というのは無償のものではなくて、価値があって、かつ、お金にも還元できるようなものであるということを訴えていかなければ、本当に日本が取り残されていくんじゃないかと心配しています。
中田 研究費の私の個人的な経験でいくと、最近、企業にとって文系の先生方の研究が、経済的、あるいは企業活動にとって価値ある研究であるというケースが増えてきたような気がしています。というのは、実は今、ある企業とお話をしているのですが、その企業が私と接点ができたというのは、私が昔書いた研究書を、その企業がとても有効に使ってくださっているんです。どう使っているかというと、株主に対する説明、いわゆるインベスター・リレーションなんですけど、いろんな質問が出たときの答えに、参照してくださっているんですね。
僕は正直、自分の研究書は研究者しか読まないと思っていたのが、企業が読んでいるというのが、まず非常にうれしかった。実は、その本をつくったときから、出版社と一緒に、できたらサラリーマンの人たち、具体的に言うと技術者の方々が、通勤の電車の中で片手に持って読んでもらえるような本をつくりたいねと、そんな話をしてつくったという経緯もあるんですけれど。それが物の見事に期待したとおりになっていてうれしかったです。
言いたかったのは、今までだったら、企業が内部の商品開発であったり、新しい価値創造のところで使うネタとしての何かアイデアを探すとか、探査というのは、そうだと思うんですけど、そうじゃなくて、企業が、自身の活動に関して何か説明するときに使うための資料として文系の研究を使う。そんなふうなかたちにも、われわれの研究は使えるんだなと。そのきっかけは、企業活動に対して社会の目というのが非常に厳しくなっていることです。日本企業においても銀行の融資でもって企業活動をするのではなくて、多様な株主が株式を持つことで企業を支えているというシステムに変わってきています。そうすると、株主にとって、さまざまな興味や利害関係、あるいは、もっと単刀直入に言うと、株価がどう決まるかというときに、その要因として、さまざまな文化的、社会的要因というのが実は非常に重要になってくる。そういうところに来ると、社会科学や文系の先生方の研究が、関係する。
そうですね。
中田人間の心理であったり、社会のものの決まり方に関する研究というのが、産業界にとっての価値ある情報になっていく。これから、もっとそういうケースが増えていくんじゃないかなと、最近僕は思ったの。
私も、そのように思います。やっぱり産学連携に焦点を当てると、技術だけの連携ではなくて、先ほど先生が言われた投資家に対する説明の点でもそうですし、経営判断をするとき第三者から助言をもらう。特に、やっぱり大学の先生のように知見の広い先生方からもらうというのは、企業の運営にとってすごく大事なことですので、そういうふうな事例というのは、これから私も増えていくと思っています。