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SOSEI TALK

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日本における「技術イノベーション」と大学教育環境

中田教授 僕はスピードの問題もそうだし、技術とイノベーションが、これからの企業にとっての核であり、企業の存続の決定要因そのものであり、原点はそこにあるのだという認識が弱いと思います。まだ、市場のニーズを見据えて商品を作りますよね。マーケットを見たり、カスタムオリエント(消費者ニーズに本当に志向した部分)なマインドを持ってビジネスをすれば価値が生まれて、ビジネスとして存続しうるという認識を強く持っている。そのような考えのコインの裏側としては企業価値への貢献に対する技術の評価が低い。まだ技術をそこまで大事なものと見ていないように思えます。
ウィッタカー教授 おっしゃることは物づくりといいながら技術が充実してないという意味ですから、それはありうるでしょうね。
中田教授 対談風景ヒューは日立(日立製作所)を良く調べましたよね。日立は日本企業の高い技術力の代名詞みたいなものでしょう。日立の変遷を研究した時に、この10年くらいの間で、彼らの中で技術というものの意味は変わりましたか?
ウィッタカー教授 大きく変わったと思います。1998年に赤字に転落した時、組織改革や人的資源改革、雇用関係の改革などの経営改革を行ったのですが、やはり2001年くらいからMOTを考え始め、それを実施する体制をどうやればいいかを考えたと思います。ただ、口では言いやすいけれども、実施するのはなかなか難しいですね。しかし位置付けは変わったと思います。技術と会社、あるいはグループの戦略はもっと別のものだったのですが、今は近くなったと思います。
中田教授 アイロニカル(皮肉的)に聞こえるかも知れないけれど、日立はそこまで技術を高く評価してアテンションも位置付けもすごく高めたと思うのですが、その割には実際のパフォーマンスが伴ってきていない。それに対して先ほど私が例に上げた会社は、まだまだ技術に関する思い入れが薄いと思えるのに、結果は出しているという、逆説的な状況です。
ウィッタカー教授 事業の領域がかなり広い巨大企業だからすぐには難しいでしょう。人員整理をやればすぐに効果は現れるけど、すぐに方向転換が実現するのかなど、先ほどの会社より難しい気はします。
中田教授 中田教授日本経済全般の話をしているけど、少し研究のほうの話をしましょう。一言で言って自分たちが行ってきた3年間の研究の良かったところと、もう少しここはこうやったほうが良かったという反省点をお話しください。
ウィッタカー教授 先ほどの話ですが、大企業と新規ベンチャーを対象に、二つのイノベーションシステムという仮説に持ち込んで今研究しているのですが、なかなか研究課題としては、回答が出ないし、積み重ねがいると思います。トピックとして間違っていないと思うのですが。ただ研究所を作りながら研究するということはなかなか難しいことです。もっと研究者と一緒に議論して、最初の構想の研究者育成とかを充実させなければいけないと思います。研究課題の中でHRM(人的資源管理)だといいながら、自分たちのところではきちんとしてないことが自己反省ですね(笑)。
中田教授 ケンブリッジにいた時の教育研究環境と、同志社大学も含めて、日本の大学の、特に大学院の教育研究環境と比較して、どう評価していますか、またどういう問題をどのように解決していけばいいと思いますか?
ウィッタカー教授 ケンブリッジでは、博士号の学生の面倒をカレッジで見た経験が長かったのです。そこで問題になったのは教官の学生指導と責任のとり方にばらつきがあるのですね。先生たちは良心的にやっているけど、そのばらつきがあるのは事実で、十分指導を受けていないという気持ちを持っている学生もいました。日本にきて、さらに、指導教官の仕事のばらつきが大きい気がします。定期的な指導教官とのコンタクトで書いたものに対してのフィードバックを与える、それがタイムリーに行われ、完成にいたるまでの目処が早く立つような指導をする。日本においては、それが学生によって曖昧じゃないかと思うのです。学生が3年程で卒業して自分で学者として仕事ができるような準備をするプロセスが必要ですね。その教える準備をするという意味では、指導教官の助手をするのが良いのか、その人の独立のサポートをするものが良いのか、いろいろな解釈があると思うのですが、それも曖昧な気がします。