こちらに共通ヘッダが追加されます。

SOSEI TALK

HOME > SOSEI TALK #3 page2

SOSEI TALK #3

菱岡さん まだ新しい概念だと思いますが、先生は「ヒューマン・セキュリティ」について、どのように思われますか?
ゴノン教授 新しい概念ですからその内容は、まだ、はっきり定義されていません。最近、メディアが取り扱った問題には「ヒューマン・セキュリティ」という、広い意味での日常生活の中の不安とか、あるいは安全・安心の問題にかかわっている事件が多いですね。
皆川さん それは、どういった事件なのでしょうか?
ゴノン教授 ゴノン教授例えば4月26日に起こった尼崎の電車脱線事故、つい最近ではアスベストの問題、それから食べ物の安全などです。毎日、テレビなどがその問題を取り扱っていますね。「ヒューマン・セキュリティ」、つまり人間が安全・安心できる状況で暮らせる社会をどうすれば実現できるか、私たちはどう考えたらいいかという問題が大きいですね。
菱岡さん もう少し詳しく教えてください。
ゴノン教授 電車の脱線事故は人間の問題でもありますし、技術の問題にも関係しています。ですから、そういう事故を考える場合には、ヒューマンの面だけではなくて、技術と人間はどんな関係を持てるか、そういう観点からも考えなければいけないと思います。同じようにアスベスト問題。健康に害を及ぼす石綿が長年、建材などに使われていた問題です。実はフランスにも昔、同じようなことがありました。50年代に大学が建てられて、その建物にアスベストが使われていたのです。数年前にその大学を閉めることになり、その時に死者は出なかったと思いますが、健康上の問題はあったようです。当時の知識でアスベストという材料を使って建物を造るという決定があったのです。みんなとても賛成しました。しかし、現在であれば、どれ程危険な材料であるかが分かっています。ですから、私たちが生きている社会は、私たちに安全・安心を常に与えてくれるわけではないということを、そのとき初めて意識するようになりました。
皆川さん そのような問題を解決するには、どのような考え方が必要なのでしょうか?
ゴノン教授 問題が起こっても、私たちは生きなくてはならない。違う意見を持っている他の人たちと一緒に暮らさなければならないわけです。共存・共生していかなくてはいけないのです。では、そういった考え方の違う人たちとの中で、どういう風にすれば安全・安心で暮らせるかを考えなくてはなりません。また、完全な安全・安心は心理的な側面も持っています。人間は外からの影響を受けて自分の内面を見ているわけですから、自分の中からも不安感を作り、その気持ちを表に現しているのです。そのような状況を踏まえ、現在の不安定な社会で、各々の個人が、安心して生きられる居場所を、どうやって見つけたらいいかという問題がすごく大きいのです。つまり、その問題を考えるには、人間という、とても根本的な存在のことを考えなくてはなりません。
皆川さん トーク風景人間とは何か、ということですね。
ゴノン教授 そうですね。そして、経済の面や技術面も含め、いろいろな観点から「ヒューマン・セキュリティ」のことを考えなくてはいけない時期が来たと考えています。先ほどもいいましたように、「ヒューマン・セキュリティ」の内容は本当にはっきりしていません。なぜかというと、それは一種の人間学を作る、新しい人間学を作るということを目指しているからではないかと思っていますから。そんなに簡単に『ヒューマン・セキュリティということは今、こんな事を考えている』とか『こんな概念だ』とかはいえないと思います。しかし、私たちは一緒に様々な問題を考えていく必要があると思っています。そのような理由で、今は、こういう概念だとはっきりということができないのです。でも、そういう問題の複雑さを少しずつ把握できるようになるとは思います。