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新川 達郎

これからの総合政策科学研究科と
公共政策分野における教育研究を考える

本学大学院総合政策科学研究科は、その設立の時点から、公共政策と企業政策の教育研究を主要な柱としてきた。いずれも学際的な研究領域としての政策科学を基礎としながら、総合政策科学の観点からの教育研究を行ってきた。公共政策分野については、国や地方自治体など公共部門の政策ないしは公共性を有する政策に関する教育研究を幅広く遂行してきた。公共政策を限定的に解釈すると、政府部門の活動として定義されることも多いが、本研究科では、公共部門と民間部門とを問わず、公共性ないしは不特定多数にかかわる政策を広く対象として教育研究を行ってきた歴史がある。

ところで政策分野については大学院教育の中でもかなり早い段階から注目され教育研究が行われてきているが、「政策」を冠した研究科が登場するのは、比較して見れば近年であり、この20年ほどの間に急速に増えてきたように思われる。管見の限りでも40前後の大学院研究科が数えられる。特に2003年に専門職大学院制度が設けられ、高度な職業専門能力の養成を目指すことになり、公共政策分野についても、各大学で設置が続くことになった。本研究科は、専門職大学院ではないが、その先駆的な例という性格も持っており、高度専門職業人養成という目的は共通しているところもある。

さて公共政策の研究は、経済学や財政学、法学や政治学あるいは行政学において、比較的一般化がされ、研究が進められる一方で、社会政策や環境政策に代表されるように政策分野ごとに研究蓄積がなされてきていた。しかしながら、近年では文理を問わず、様々な分野で、政策研究が進められるようになっている。そのため公共政策の研究においては、理論的な枠組みについても多様なアプローチが見られるようになるし、個別政策テーマに関する研究についても、異なる学問分野からの接近がこれも多様に行われるようになっている。諸科学の中で「公共政策」に焦点を合わせることが当然とされるようになったともいえる。2013年度からは、文部科学省科学研究費補助金においても時限付き細目として「公共政策」が採用され募集が行われた。

その一方では、こうした公共政策分野の発展の下で、研究の多様性と多元性が顕著であるが、そこで改めて考えておかなけえればならないのが「公共政策教育」である。公共政策教育をどのように規程し実践を行うのか。この点については、実は、既存の各学問分野に委ねられているところも多い。公共政策教育の手法は、もちろん研究方法の多元性や多様性と表裏の関係にあるが、しかし政策現象を理解しようとするとき、そこには共通の価値や態度、あるいは視点があるようにも思える。例えば、幅広い社会科学的な理解、計量経済的な把握やコミュニケーション技術などは共通の基礎であり、研究が現実世界と結びついていることが前提となっているといえるかもしれない。それらが単一の一貫した体系に収斂しているなどというつもりはもちろんないが、諸科学の理論的な枠組みの中で公共政策教育に共通する要素が、明らかになり始めているし、シナリオライティングや多様なシミュレーション手法、ゲームやロールプレイなどの具体的な手法も教育方法として活用され始めている。翻って、そうした共通要素を慎重に見極めながら、公共政策教育に求められる知識、技術、能力を明らかにしていく努力が必要になっているように思われる。これらはもちろん大学研究科ごとにそれぞれの学位プログラムにおいて探求されるべきところであるが、同時に公共政策の教育研究のコミュニティとして取り組むべきところも大いにあるのではないかと思われる。本研究科でも米国の行政大学院や公共政策大学院に倣ったケース研究やキャップストーン科目を設けているところである。ともあれ、諸外国で進みつつある学位プログラムの改革の試みが参考になるが、この点についての具体的な論及は別の機会に譲ることにしたい。