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Maureenから教わったこと 教授 藤本哲史

衆議院、参議院では法案審査の際に参考人の出頭(出席)を求め、その意見を聴取して審議の参考にする制度がある。この度、防衛省設置法等改正案の参考人質疑に衆議院安全保障委員会及び参議院外交防衛委員会に呼ばれて意見陳述する機会を得たので、その報告をもってコラムに替えさせていただきたい。

ところで参考人質疑とは聞きなれない言葉で、マスコミなどでよく耳にするのは証人喚問だろう。こちらは議院証言法に基づき証人には出頭義務があり、また宣誓の上、虚偽の証言には偽証罪の適用もある。そのような話ならばお断りしたいところであるが、参考人には発言にペナルティはない。では発言にフリーハンドはあるのか。


実は会議録を見ても何の記載もないが、参考人の人選は各会派の推薦を踏まえて理事会で決定することになっているので、よく会議録を見れば、どの参考人が何党の推薦かはなんとなくわかる。今の衆議院ならば理事を出しているのは自公、民主、維新なので、1番目の参考人は自民党、後の方の参考人は野党だろうというわけである。ところで、私が出席した安全保障委員会は重要法案の場合、特別委員会が設置されるので、今回のような法案の参考人質疑のケースは防衛省昇格時とか、在日米軍再編特措法など、防衛省の組織や防衛政策の法的枠組みが大きく変わる時に限られている。今回の法案は防衛省に防衛装備庁という巨大な外局を新設することと、自衛隊の運用機能を統合幕僚監部に一元化することに伴い、これまで「文官統制」と言われてきた内局と幕僚監部の関係を大きく見直すものである。

では、このような法案に意見を述べるようにと言われた参考人はどのような言動をとるだろうか。参考人候補に対しては「□□党の△△議員から推薦があったが参考人として出席は可能か」といった打診がある。その党の政策や方針に反対の人に声がかかるわけはないと思うが、特定政党と意見が全く同じという参考人もいないだろう。その結果、参考人の発言は、本人の真意はともかく、どうしても推薦してくれた政党の方針に沿うものになってしまうのではないか。このような邪推をするのは私だけかもしれないが、代理人が依頼者(この場合は推薦者)の意に沿う形でサービスを提供するのは、人間の心理から言っても本質的なものだろう。いわゆる出来レースになってはいけないのだけども、とても気になることであった。

ではどうすれば、参考人の発言をフリーハンドにし、色々な意見を委員の参考に提供することが可能になるのか。一案としては公聴会で採用されている公述人の一般公募(今は実質的に政党推薦のようだが)という方法が考えられる。この場合、応募者には作文を書いてもらい、事務局で選考する手間がかかるし、本当に説明を聞きたい専門家が応募するとは限らない。参考人への依頼が委員会の直前のような場合には、やはり政党からの推薦でなければ準備も間に合わないだろう。


だとすれば、慣例上参考人質疑は4人に限定するのではなく、1日コースとして、8人ぐらい呼んで、多角的な観点から意見交換した方がいい。実は4人だと賛成2、反対2に分れてしまい、参考人間の意見も食い違いが多すぎてあまり噛み合わないのである。8人いれば賛成なのだけど、ここは違うとか、反対だけどここは賛成できるとか、意見のバリエーションも出てくる。多様な選択肢が委員に示される中で、最後は議員に判断してもらえばいい。今回の審議で気になったのは質問の割り当てのない議員の扱いである。黙って聞いていればいいというのは酷なので、最後に10分ほどでも自由討議の時間を設けてはどうか。

参考人質疑といえども、傍聴席には多数の市民もいて、政府側からも幹部が詰めていた。参考人の発言はあくまで参考程度かもしれないが、それを受けて、大臣に質問をぶつける議員も少なくない。だからこそ有識者として呼ばれた参考人、特に研究者は高い倫理観をもってその発言をしなければならない。その発言は会議録に記録され、後世の研究者による評価を受けることにもなる。冒頭述べた発言のフリーハンドとは、実は参考人自身の矜持の問題なのであろう。