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公務員改革と研究者の責任 教授 太田肇

公務員改革を巡る議論が盛んに行われている。2008年に制定された国家公務員制度改革基本法では、官民の人材交流や能力主義、実績主義が基本理念として掲げられ、公務員の労働基本権付与についても検討するとされている。

公務員改革

また各政党は来る参議院選挙の公約として、給与体系の抜本改革(自民党)、独立行政法人の徹底検証(公明党)、国家公務員総人件費の09年度比2割削減(民主党)などを掲げている(2013年6月9日付「日本経済新聞」より)。

これらはいずれも議論に値するテーマだろう。しかし、そこには重要なポイントが欠落しているように思える。

公務員改革の究極の目的は、最小のコストで最大のパフォーマンスを引き出すことであるといってよい。したがって人員や人件費を削減しても、行政サービスが低下したら何にもならない。人を減らし給与を下げてもサービスは低下しないと考えるなら、あまりにも楽観的すぎる。また「能力主義」や「実績主義」を唱えるだけでは抽象論の域を出ない。

要するに、給与や役職ポストといった内部資源が減少するなかで、いかに公務員の意欲と能力を引き出し、国民・市民、社会に貢献させるかという具体的な方法論がほとんど語られていないのである。

たしかに近年は国でも地方でも、人事評価制度や目標管理といった制度が取り入れられてきてはいるが、それらは民間企業と比べると周回遅れの感があり、しかも公務員にそのまま導入することには無理がある。

そもそも公務員の組織やマネジメントが民間企業に追随するものという「常識」から疑ってみるべきだろう。なぜなら、かつて民間企業の組織やマネジメントは行政のそれを一つのモデルにして形成されたのだから。

にもかかわらず、なぜ今、行政が民間の後塵を拝するようになってしまったのか?

思うに、その責任の一端は研究者の側にもある。

個人のモチベーションやチームワーク、リーダーシップ、仕事の能率や生産性などを研究する学問は経営組織論、経営管理論、人的資源管理論などである。そして、わが国においてそれらの学問は経営学に分類されるのが普通であり、主に経営学者が研究する。

ところが対象が行政組織、公務員になると、これまで法学部で扱う対象とされ、主に法学者や行政学者が研究し、発言してきた。経営学者にとって行政組織や公務員の世界は「土地勘」がないため、改革論にも参加できなかったのである。

要するに、わが国特有の学問体系に基づいた棲み分けが「死角」をつくってしまったのである。それが公務員改革を遅滞させた一因だといえるだろう。

ちなみにアメリカなどでは研究においても、実務においても民間企業と行政組織の垣根は低い。労働者は民間と行政の間を自由に移動し、人事管理の責任者にはさまざまな役所や企業でマネジメントの経験を積んだプロフェッショナルが就いている。

わが国でも当然、これからは経営学の知見や方法論を行政に活用すべきだし、民間と行政の垣根を越える人材を育成していかなければならない。わが大学の政策学部や総合政策科学研究科に期待される役割は大きい。

ワシントン州政府のオフィス
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アメリカの市役所(ボストン近郊)
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西オーストラリア政府オフィス
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