こちらに共通ヘッダが追加されます。

総政Now Headline

HOME > 総政リレーコラム
The Calculus of Consent 50周年 教授 川浦昭彦

衆議院選挙が行われた。12もの政党が候補者を擁立したが、争点の一つには「決められない政治」からの脱却が含まれていた。この場合の「決める」とは、「共同的意思決定を行う」ことにほかならず、それはまさに公共選択(Public Choice)の学問分野が分析の対象としているものである。

Public Choice

公共選択の研究者にとって、今年(2012年)はある意味で記念すべき年であった。この学問領域が確立する重要な契機が、ブキャナンとタロック(James Buchanan and Gordon Tullock)両教授によるThe Calculus of Consent : Logical Foundations of Constitutional Democracyの出版であったことは衆目の一致するところであるが、その出版年が1962年であり、今年はそれから50周年という節目の年である。それを記念して、公共選択の学術専門雑誌であるPublic Choiceは、「"The Calculus of Consent" after Fifty Years」と銘打って今年9月に特別号を刊行し、The Calculus of Consentが社会科学全体に与えた影響、公共選択とコースの定理の関係、市場と政治の比較といった学問的な意義に関する論文に加え、ブキャナン・タロック両教授による執筆当時の回顧なども掲載し、多様な側面からThe Calculus of Consentを議論している。

ブキャナン教授の寄稿には、この著書をタロック教授と共著で執筆することを決めたのは1959年であったことが記されている。教授は1919年生まれであり、The Calculus of Consentは40代初めの仕事であった。研究者のキャリアを代表する著書を執筆する年齢として、これは特に早いとも言えないが、その著書の50周年記念の学術雑誌に自ら寄稿することができるとは、幸せな研究者人生であることは間違いない。

ブキャナン教授は、公共選択の学問分野を切り開いた功績によりノーベル経済学賞を1986年に受賞した。受賞決定を報じる日本経済新聞(同年10月17日)1面の「米のブキャナン教授―公共的選択の理論確立」という記事の中で、「最大の功績は民主主義のもとでの政策決定のメカニズムを解明した点だ。減税など政治的に受けがいい政策が先行し、財政赤字が拡大すると指摘し、ケインズ経済学を批判した。先進各国が軒並み財政赤字に悩んでいるだけに、受賞の意味は大きい」との石弘光一橋大学教授のコメントが引用されている。これと全く同様の指摘が現在に至っても多くの先進国に当てはまり、ギリシャ危機に見られる通りその問題は更に深刻になっていることを考えると、ブキャナン教授の先見性は明らかである。

総合政策科学研究科は、高度な問題解決能力を総合的に備えた政策エキスパートの養成をその目的として謳っているが、政策研究に携わる研究者を養成する使命も負っている。オリジナルな発想で修士論文・博士論文を執筆し、政策分野での新しい学問領域の創出を促すような人材が輩出することを心より望みます。