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住んでみてわかった京都のユニバーサルデザイン 教授 関根千佳

「東カ南ピ」という言葉をご存じだろうか?「東西はカッコー、南北はピヨピヨ」のことである。これは、信号機から流れる音声を示すものだ。全国にあるが、京都は方向が明確なので大変歩きやすいと、視覚障害の友人には好評である。碁盤の目のようになっている京都ならではの話である。ちなみに、方向を示すために、実は東へはカッコー、西へはカカッコー、南へはピヨ、北へはピヨピヨと「鳴き交わす」のである。

京都駅構内の点字プロック

京都は、優れたユニバーサルデザイン(UD)の街である。5000万人と言われる観光客は、子ども連れもシニアにいれば外国人も多い。直感的な情報提示のためのピクトグラムや多言語表示が、日本の他のどこよりも必要とされるし、実際に多い。自転車でどこまでも行ける町は、実はベビーカーや車いすでも移動が可能ということだ。路地が狭いなどの課題はあるが、勾配は少なく、階段利用の地下歩道や歩道橋もほとんどない。外国からのお客様が、トランクを押して移動できる環境なのである。

美しさにも気を配っている。京都駅構内の点字プロックは、黄色とピンクの組み合わせとなっており、視認性を確保しながらも優しい配色である。江湖館を始めとする町家のリノベーションは、美しい日本の面影を残しながら、内部はきちんとUDに配慮してあり、誰にでも使いやすい。

江湖館

ひとも、全部ではないが、シニアや学生に優しい気がする。年老いた両親や障害を持つ友人たちと移動するとき、バスもタクシーも本当に親切であった。バスの運転手さんは、修学旅行の中学生に、道を詳しく教えてくれる。乗客も、それを当然として待っている。東京では考えられないことである。なんてジェントルな街なのだろう。

佐賀で始まったパーキングパーミットも、京都では「思いやり駐車場」として普及が進んでいる。妊産婦や赤ちゃん連れ、ケガをした人も使える大きめの駐車場だ。府では、政策学部の学生たちと協同で、市民への理解を広めたいと考えているようだ。

京都迎賓館

先日訪れた京都迎賓館も、美しい和のユニバーサルデザインであった。内閣府の友人に招待して頂いたのだが、一般公開も年に一度行われている。倍率もそれほど高くないので、ぜひ一度訪問されることをお勧めする。内側は、写真を撮ることができない部分も多いが、建物も庭も調度品も、最上級の芸術品である。人間国宝の方が作ったものが、そこかしこにある。最初に軍足(軍手の足バージョン)と手袋を渡されるが、これも傷をつけないために当然のことだ。

七宝焼き

迎賓館全体が伝統工芸の最高峰である。衝突防止のために大きな玄関のガラスにつけられた桐のマークは、よく見たら見事な七宝焼きであった。普通ならステッカーで済ませるような細かいところも、実に美しいUDの手仕事である。トイレの男女のサインも、お公家さんとお姫様の絵柄であり、これも愛らしい七宝焼きで微笑ましかった。漆塗り、蒔絵、截金、陶磁器、織、染、刺繍、竹細工、木彫、畳、和紙、作庭などなど、何もかもが、美しく、使いやすく、日本の良さを伝えている。「庭屋一如」「現代和風」のコンセプトのもとに、日本の誇る手仕事が、ひそやかに御所の庭にたたずんでいるのだ。

きっと他にもたくさんのUDが、京都には存在するのだろう。考えてみれば、わが総合政策科学研究科も、しっかりUDである。年齢や環境の異なる多様な人々が、社会の課題を持ち寄ってより良い解決策を議論する。シニアも、ときには子供も交じる。ソーシャルイノベーションは、こんなUDな教育環境から生まれるのだ。同志社大学は教育のUDに力を入れてきた学校であり、私学ではトップを走っている。この大学から、この街から、日本の新しいUD、和風で美しいUDを、世界に発信していきたいと思っている。