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世界経済の構造的な転換と「若者」の今後 教授 内田康雄

1. 始めに(世界経済の大変化)

「日本の失われた20年」という表現がよく聞かれるようになりましたが、その間に世界の構造は大きく様変りしたように思います。 歴史的に新しい時代に入ったのでしょう。かつては、いうまでもなく、日本の競争相手兼貿易相手国はアメリカと西ヨーロッパ諸国でした。 これらの地域の生産コストは日本より高く、所得水準も日本よりもずっと高い水準にありました。 ですから、日本は品質のよりよい、そしてより価格が低いものを輸出し、日本人の給与もほぼ毎年のように上げていくことができました。 また、日本社会も現在のような少子老齢化には達していませんでした。まさに「日の出の勢いの国」の実感をもてる時期が確かにありました。 しかし、この20年間、日本はゼロ成長といってよい深刻な停滞状態にあります。

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しかし、今はそのような構造が大きく変化し、急激に転換してきています。 今や、中国、インド、東南アジアの国々が生産基地の重要性を高めていると同時に、またこれらの国は消費地としても重要性を増していっています。 日本国内は少子老齢化で大きな需要増は望めなくなっています。それに加えて、経済のグローバル化は、 品質と生産コストの世界的な最適化(ある種の共通化)をますます要求してきています。 そこでは、日本だけがよい給与をアジアの中で受け取れているということもだんだん難しくなり、国際的な挑戦に会うようになってきています。

2. 日本企業の国際化

こうした世界経済の変化の中で、日本企業もこれまでの輸出型の生産体制から、どんどん海外生産の比率を上げていっています。 この傾向は今後も進行,拡大していくでしょう。なにしろ生産品の大半を日本の外で販売している日本企業が少なくないのですから。 そして現在の円高が追い打ちをかけています。また、日本国内の需要の拡大は、少子高齢化のなか、さほどは期待できません。

日産自動車の「マーチ」がすべてタイの日産工場で生産されることになったニュースは、日本でかなりのショックなり、 諦観(そこまで来たかと)をもって受け取られたかもしれません。しかし、その決定のプロセスは興味深いものです。 日産は世界中の工場で、生産コストと品質で互いにコンテストをさせました。その結果、バンコクの工場がコンテストで一位になったため、 日本の工場は日産の売れ筋商品、マーチの生産を断念せざるを得なくなったのです。これは、企業内の国際競争といえるでしょう。

円高を梃に、多くの日本企業が海外でM&A(企業の合併と買収)を拡大していますが、その後の課題は合併後の連結子会社、関連会社が拡大したこと後、 いかに収益をあげていくかということでしょう。そのためには、さらに国際化を進めていかなければなりません。

3. 企業人材の国際化

よくいわれるように「売上額で海外比率が高まってきたが、日本企業は、外資のグローバル企業と比べて、人事面でまだまだ遅れている」。 そのため、日本の企業もようやく遅ればせながら国際的な視野で企業人材を獲得し始めています。 例えば、建設機械のコマツは、中国の10以上ある子会社の社長をできる限り中国人のトップにするといっています。 味の素も、連結グループ企業の従業員のマジョリティーは、日本人でない人たちが占めるであろうと言っています。 日本郵船においても、一等航海士等の上級職に就くフィリピン人がでてきており、フィリピン人の船長の下で日本人が働くことが当たり前になると、 日本郵船社長の工藤恭三氏は述べています。企業活動の国際化で人材の世界規模の最適な調達は今後ますます続くと予想できます。

こうしたことは、日本の中小企業も例外ではありません。海外市場で販路を拡大するためにも、商談をこなせる人材を増やしていかなければなりません。 ですから、中小企業内でも英語検定を義務付けたり、社員の語学力を引き上げる努力をする所が増えています。 当然ながら、中国語講座を始めている所もあることは、いうまでもないでしょう。

4. 今のあいだに備えよう(理科系、文科系を超えて)

このような状況で、若い学生諸君は今準備を開始する必要があります。 たった 10年、15年間前にさえ、コンピュター通信が経済、ビジネスの世界、 そして私たちの生活の仕方をこんなに変化させるとは予想もできませんでした。 ですから、学生諸君が、15年、20年後に経済社会がどうなに変化しているかは予想もできません。どんな所にいっても、いかなる状態でも生き抜けるような準備が必要です。 まず英語の力をドンドン上げることは言うまでもありません。英語は外国ではなくて私たちの共通語であると感じることも重要でしょう。 さらに気力のある人はもう一つ堪能な外国語(例えば中国語とかスペイン語、インドネシア語等々)をもつことです。 日本がたとえ沈没しても、生き残ってみせるという気持ちで頑張ることでしょう。

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日本には長年、理科系、文科系という言葉で人間を簡単に類型化してしまうつまらない慣習が残っています。 しかし、たとえ文科系の学部や研究科にいても数学や統計学をしっかり勉強することを薦めます。 そしてコンピュターを使って、統計分析等をすることは大いに重要でしょう。文科系であろうとも、コンセプトだけ学ぶことに終らずに、 操作性のある知識と技能を是非とも磨いていくことです。そうすることで、分析力も増すことができるでしょう。 そして、様々の科学技術に関するもの(再生エネルギー、環境、工学分野等々)の読書を増やしていくことでしょう。 ここまで、私の文章につきあってくれた人はどうか今日からこうした準備を強化、再開していって下さい。