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21世紀COEプログラム「技術・企業・国際競争力の総合研究」中間評価結果をうけて 総合政策科学研研究教授 中田喜文

1. 10月11日21世紀COEプログラム委員会は、平成15年度に採択されたCOEプログラムに対する中間評価の結果を公表した。COE、とりわけその進捗と成果にたいする高い社会的注目と関係大学にとっての中間評価の重要性を鑑みると、2年前4倍を越える申請の中から選定された社会科学系25プログラムに対し、今回さらに4段階の評価を行うことは大変困難な作業であったと推察する。

明治の大学創設期から今日まで、日本の大学発展の中で、大学間の人的・物的リソース格差は、様々な形で累積的に拡大してきた。このような歴史性を持つ大学格差を考えると、研究テーマの重要性と研究実施力評価のみに基づき、多額の国家予算を提案研究にたいし投入し、さらにはその進捗状況に基づくプログラム評価を行い、それを社会に公表する制度が確立されたことの意味は重い。新しい世紀において日本の大学は過去の柵から解き放たれ、平等な競争条件のもと、国内大学間のみならず、世界の大学とも、その学術研究計画の独創性とその実施力で、互いに競い合う環境が整備され始めたことの証である。一研究者としてこの制度にたいし、高い評価を与えたい。

2. 日本の社会科学研究が世界の最高水準研究と伍して競うためには、乗り越えるべきハードルが様々存在する。研究テーマの人類にとっての重要性・普遍性、研究方法の科学的厳密性、そして研究成果の独創性の3要件は、学問分野に関わらず等しく越えなければならない必要条件である。これらの条件を満たすには、我々社会科学者は人類の課題を広く探査・実感し、その課題解決の重要性を文明史の中で評価しなければならない。また、研究方法の進歩に貢献し、その最先端の科学的検証方法を実践することで、成果の客観性を高めなければならない。そして何よりも、成果そのものが、新しい知見と課題解決に向けての指針を提供するものでなければならない。

我々のCOE研究は、これら条件を越えるため 1) 技術のフロンティアを開拓し、それを社会的に有用な商品やサービスへの転換を目指す企業との間で問題意識を共有し、さらには 2) 政策立案者と彼らが直面する課題について意見交換を行う、その様な場を多様化、定期化することで、本研究の問題意識が現実の社会に基盤を持つことに留意した。また、 3)研究の実施においては、一大学・一研究科の枠を超え、先端的研究で評価の高い世界の研究機関との連携を進め、 4)研究メンバーにおいても、伝統的な社会科学の個別学問領域を越え、社会科学を構成する多様な学問を横断するのみならず、理学・工学研究者まで包含する文理横断的体制を構築することで、研究の先端性と独創性を追及してきた。これらの条件は日本の社会科学研究が未だ克服のための模索を行っているものであり、我々のプログラムは、21世紀の社会科学研究のあり様に対し、1つの指針を提供できたと自負している。

3. また我々のプログラムは、日本の社会科学研究者養成システム(後期博士課程)に対しても1つの将来モデルを提示した。日本の研究者養成は未だ狭い学問領域に精通した、職人的学者の輩出を主たる目的(結果と言うべきかも知れないが)に行われている。21世紀の世界が今まで以上に科学技術に大きく依存することを鑑みると、その様な社会のインテレクチュアルコアとなる「博士」を養成する後期大学院教育は変わらねばならない。その要諦は、1つには科学技術研究の変化のスピードに対応できる柔軟性と成長力の養成、2つには社会的に多様な人材を対象に教育できるプログラムの公開性である。

我々は、国内外の大学院で学ぶ者に対し、「TIMオープンテュートリアル」及び「インターナショナル Ph.D. ワークショップ」を開講することで、一大学の特定の学問領域の中で大学院教育を完結させるのではなく、研究テーマに基づく研究対象指向性を持つ研究科横断的大学院教育プログラムの1つのモデルを提示した。また、本年4月、本研究科に開講した「技術・革新的経営研究コース」は、上述の理念と目的に基づき社会人に広く門戸を開いた博士養成プログラムであり、この取り組みに対する評価も、COE全体に与えられた高い評価の一因と考える。

以上、今回の中間評価に対し思うことであるが、このような多様な新しい試みを評価し,貴重な大学資源を投入する決断を行った大学長以下の同志社大学執行部、またこのような革新的プログラムの理念に賛同し、研究チームに加わっていただいた国内外の多数の研究者、そしてわれわれの活動に対し多様な支援を惜しみなく提供くださった企業、政府、マスコミ関係各位に対し、改めて感謝するとともに、2年半後のプログラム終了時までには、高い社会的期待と大きな支援に答えうる成果を上げるべく、今後一層の努力を傾注したい。