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リヴァプールにおけるローカル・ストラテジック・パートナーシップ―最近の英国における地域再生― 総合政策科学研究科科長 新川達郎

5月の連休期間を利用して、英国の地域再生に関する現地調査を行う機会に恵まれました。私が参加したのは研究計画全体から見ればほんの一部に当たる調査であり、主に地域政策の比較研究という観点から、英国の実態を明らかにしようという趣旨のものでした。英国についていえば、ご存知のとおり、1960年代から英国病が話題になり、70年代には地域開発の様々なプログラムが、政権党の如何を問わず展開されてきました。現在の労働党ブレア政権においても、従来の政策を引き継いで、地域再生に努めています。

市内中心部
写真1 市内中心部
市街と非常警報
写真2 市街と非常警報

今回、主に訪問したのは、イングランドでも最も衰退した地域として知られているリヴァプールを中心とした地域です(写真1)。リヴァプールは、いうまでもなく港湾都市として繁栄した地域なのですが、1920年ころにはおよそ80万人を数えた人口が、2000年にはその半分近くに減少するという、長期的な停滞状況に陥っていました。そして、EUによる欧州地域開発基金のObjective 1という重要度の高い地域再生事業の補助金の対象地域にもなっているように、地域再生を目指した各種の再生事業が実施されてきていたのです。そして、今回の調査の目的の一つでもある英国政府によるローカル・ストラテジック・パートナーシップス(以下、LSPsと略称)と呼ばれる地域再生事業もここで進行中でした。(写真2

LSPsの特徴は、対象地域に様々な地域の担い手からなるパートナーシップ・グループの設置を促し、ここを受け皿としながら政府の補助金を集中的に投下していくこと、その地域再生事業のためにはボランティアやコミュニティのグループと連携し、住民参加を得て、様々な活動を進めていくことにあります。リヴァプールにおける地域再生のためには、市やその他の行政機関、産業界、ボランティアなど様々な分野で活躍する主体が集まったリバプール・パートナーシップ・グループ(以下、LPGと略称)があります。このLPGが、地域再生事業の情報交換やコーディネート、そして事業の促進役となっています。一方、実際の地域再生の活動は、コミュニティ再生や都市再開発活動、文化芸術活動などで、様々なパートナーシップ組織を目的別に組織して行われています。

NHSLIVCITY
写真3 NHSLIVCITY

今回の調査では、LPGに参加している大学の研究者との議論もありましたし、非営利組織からまた事業者からもお話を伺う機会がありました(写真3)。印象的だったのは、ジャガー社をはじめとする事業者がパートナーシップに参加し雇用問題に積極的に取り組んでいたこと、近隣住区レベルの地域活動が積極的に進められていたこと、マイノリティ問題を含めたボランティア・グループのネットワークがとても元気があったことでした。

コミュニティサービスのヒアリング
写真4 コミュニティサービスのヒアリング

また、警察などと一緒になって地域の安全確保に努めているグループの活動にも、目を見張るものがありました。市民生活の実態に少しだけ触れられたと感じられ興味深かったのは、コミュニティ・ヘルス・ケアのグループが進めていた禁煙運動についてで、これが大分進んできたので、次は禁酒運動だなどと話が弾んだことでした。(写真4

リヴァプール市内を見ていると、一時滞在者の目にも、地域再生がそれほど簡単に進まないだろうという実感がありました。ドックを使った再開発は一部すでに成果をあげ、新たな商業センターの建設など、大規模開発は確かに成果をあげ始めているようにも見えます。また、中心市街地では古い建物の再生も進んでいます。しかしまた、これらの大きな投資がいつ回収できるのか、その一方では、人権や福祉、保健などの地域活動が本当に成果をあげ、いつ快適な市民生活が見られるようになるのかは、まだまだ時間がかかりそうだと感じました。

今回は印象に残ったところだけの断片的なリヴァプールのご紹介でしたが、いずれにしてもパートナーシップの取り組みについてはきちんと検討し、あらためて報告したいと思っています。